百年法
おかげさまで順調に風邪のフルコースを頂きました。
フルコースは何十年か振りのことです。
極限の一山を超えた後に待っているのは
「まだ体は動かないけど、頭はちょっとスッキリしてきた退屈な状態」
と言えましょう。
テレビ画面はまだ脳にシカシカッと刺激が刺さりますから
そんな時には読書です。
『百年法』
昨年、話題の一作としてテレビで採り上げられていたので
当時、放映中リアルタイムで、素早く図書館にweb予約したにもかかわらず
すでに何人か待ちだったという人気の本です。
手元に来るまで2か月以上かかりました。
期待大です。
人はHAVIというヒト不老化ワクチンのような物を摂取することで
永遠の若さを手に入れるそうです。
ワクチンを受ける際
「処置を受けた百年後には生存権を剥奪される」
ことに誓約させられます。
受けるときは百年後のことなど、ずっと先の話だと誰もが思いますよね。
架空の国、日本共和国では
ほぼ全国民がそれを受けていて
ついに第一期の処置者の生存期限が来年に迫っている
というあたりから物語はスタートします。
生存権が剥奪された者は一年以内にターミナルセンターへ出頭して
いわゆる安楽死処置を受けなければなりません。
当然、老化もしていないし、どこも悪くない人たちは
嫌がるわけで、国民投票を行った結果
百年法は一旦凍結されてしまいます。
凍結されたらどうなったか
人はますます不安定になっていきます。
では一体いつ死ねばいいのだと。
あまりネタバレでは何ですので、筋はこれくらいで…
えっ!と思ったのは
死ぬまで生理が来る設定です。
いくら不老でも何でもそりゃあんた…
卵子の数が有限&打ち止め説はあっさりスルーの構えです。
当然、80歳代の出産とかも物語中に存在します。
いくら体年齢が若いからと言ったって
その年齢ともなると
何か、もうそういう事飽きちゃった
みたいに思わないのかしら…
思わないらしいです。
精神的な成長は、体の老化と深く関係がある設定で
登場人物たちは皆、気持ちまで若いままなのです。
ひょえ~(´Д`)~
右も左も20代
どこへ行っても20代
何だか社会全体が
先生のいない学校みたいだネ。
生きるとはどういうことか
死ぬとはどういうことか
それはコインの裏表なのかもしれません。
片方だけしか見たくない
と、しがみ付くと
必ずどこかで破綻するような気がします。
これは私、何にでも思うことなんですが…
例えば、アンチエイジング。
女性にとって、とても大切ですが
しがみ付くと執着になって
かえって本来あるその方の美しさを歪めてしまう
可能性を孕んでいるように思えます。
老いがあるからこそ若さがあり
死があるからこそ生があることを
この本を読むことによって
今一度、深く考えさせられました。
ストーリーは逸品。
名著でしたヨ~。
by cellmeganes | 2013-02-03 12:32 | 本